2014-02-13

2014年2月,東京銀座,帰還 山本直彰展

 銀座のコバヤシ画廊で「帰還 山本直彰展」を見てきました。毎年,新作の展示を楽しみにしています。真冬の銀座の冷たい喧騒から一本通りを離れ,地下の画廊への階段を降りていきます。
  黒いドアのノブを回し,一歩足を踏み入れるとそこはもはや画家の内面世界のよう。近年の帰還シリーズは,かつてのDOORやIKAROS,PIETAなどのシリーズより一層深い抽象へと向かっているようで,画面はドリッピングのようでもデカルコマニーのようでもあり,観る者はただただその世界へと惹きこまれていきます。

 これまでは和紙に絵具が滲みこんでいく様が強く印象に残ったけれど,今回はもっと表面がツルツルした紙を用いているようで(合成紙と書いてありました),表面上の絵具への繊細な筆の動きなども見てとれます。居合わせた人と画廊主の対話を耳に挟んだところ,銀箔を紙の裏面に貼ってある箇所もあるらしい。

 それにしても,と思う。「帰還」とは「何処へ/何処から」を意味するのだろうか。以前も引用したことがありますが,2009年の平塚市美術館「帰還する風景」展の図録に寄せられた画家の言葉がその答えでもあるように思えるのですが,それはあくまでも観る者にとってヒントでしかないでしょう。

 冷たい冬の日の午後,地下の四角い部屋の木の床をみしみしと音を立てて,いつまでもいつまでも答えを求めて絵の前を彷徨います。答えは自分の言葉でしか紡げない。私もまた,何処へ帰ろうとしているのだろうか。

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