2012-11-19

2012年11月,東京恵比寿,操上和美写真展「時のポートレイト」

 東京都写真美術館で操上和美の写真展「時のポートレイト」を見てきました。「ノスタルジックな存在になりかけた時間。」という副タイトルがついています。スタイリッシュでかっこいい広告写真で有名な写真家です。先月の首藤康之ダンス公演の映像作品「The Afternoon of a Faun」の映像監督もこの人。

 今回の展覧会はコマーシャルフォトの展示ではなく,1970年代から撮りためたシリーズ写真の〈陽と骨〉,〈NORTHERN〉が2階の展示室の広いフロアを一つの空間として使って展示されています。

 〈陽と骨〉の最初の方のモノクロ作品はトイカメラで撮影したものを大きく引き伸ばしたということで,粒子が荒くコントラストが強い写真。魅力的だけれど,風化したように見える写真はどれも「スタイリッシュ」で「かっこいい」写真に見えてしまう。

 対照的に〈NORTHERN〉は,自らのルーツの北海道を見つめる写真家の眼に圧倒される写真が多く,父を看取った病室とその横に並んだ港の写真,そして近影の「冬の庭」などからはこれらの写真を撮らずにはいられない写真家の想いが伝わってくるようです。

 その〈NORTHERN〉の最初の方に,外国人のおじさんが列車の窓に手をかざしている写真があって,なんとなく見たことある人だなあ,と思って出品リストを読むと,ロバート・フランクだった!1994年の来日時に操上和美が富良野を案内したということ。そうとわかると,手をかざしたのは何をしようとしたのだろうとか,この時列車の窓から撮影した写真があるのだろうか,とか興味はあらぬ方向へ。

 1995年2月に横浜美術館で開催されたロバート・フランク回顧展Moving Outの展覧会図録を探して年譜を見てみると,「1994年4月,北海道に旅行」とあって,この短い1行の記述と美術館で見た1枚の写真とが頭の中で交錯する。そして,敬愛する年上の写真家の横顔を,手を,魂を,フィルムに収めようとした操上和美の衝動みたいなものに心が熱くなる。

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